認定こども園、幼稚園、保育園の建替え、新築、設計するなら木造園舎が断然有利な理由とは?



幼稚園、保育園、こども園、福祉施設、住居など、規模によっては「耐火構造」が要求されます。木造では耐火構造は無理だと思っている人も多くいますが、実際には可能ですし、実例もどんどん増えています。さらに木造施設づくりは国が推奨しています。また、鉄骨造や鉄筋コンクリート造にはない、メリットもたくさんあります。このサイトでは、認定こども園、幼稚園、保育園の施設設計において木造施設づくりや木造耐火のメリットなど、木造耐火の作り方などを紹介します。

2階建以上の園舎は、耐火構造なので、木造で建てれないのか?

新規に建てる「認定こども園」や「幼稚園」は、2階建になった途端、耐火要求の一番高い耐火構造にする必要があります。
(※保育所は準耐火構造以上となります)

「耐火構造だから、鉄骨造か鉄筋コンクリート造になる」と思いこみ、結果コストや工期が大きくかかる鉄骨造や鉄筋コンクリート造で、計画を進めようとしてしまいます。しかし、この数年で木造の耐火構造についてもどんどん進化していて、多くの施設が木造耐火で建設できるようになったことをご存知ないのが現況です。



多くの設計者が「木造耐火」の実績がないので、選択肢としては、敬遠しがちという実態があります。しかしちょっと待ってください。

もう一つ、木造耐火構造が普及していないのは、設計者自身に木造耐火構造の実績がないので、取り組むことに消極的だからです。

以前、保育所の設計者選定の時に、園側から「木造耐火で作りたい」という話を設計者側にしたところ、

「かえって高くつきますよ」
「大きな空間を作るのが難しくなりますよ」

と設計者が答えて、ほとんどの会社が木造以外の構造を提案して来たのです。

実際は、この写真のように、通常の住宅の木造在来工法で設計することも実は十分可能なのです。

建設コストは、木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造

住宅の多くで木造が採用されているのは、なぜでしょうか?
答えは、コストを抑えて経済的だからです。一般的に木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造で、坪単価でいうとそれぞれの間に10万円づつぐらい差があるのが通常です。

では、なぜ多くの設計士が「木造だと高くつく」と言っているのでしょうか?

その答えは、「一般施設で木造を採用するときは、住宅の在来軸組工法ではなく、木造の大スパン構造にする必要がある」と考えているからです。

しかし、実際に一般施設の空間で、柱の間が8m以上のようなよっぽど大型のもの以外のものは、通常の住宅で使用する在来軸組工法で設計は可能です。8m以内の柱間隔で、施設設計は十分可能です。




木造が構造的に一番弱いという勘違い

多くの方が、「木造は構造的に一番弱い」と思っています。

結論から先に言うと「構造計算に基づいて設計しているので、鉄骨造、鉄筋コンクリート造を含めて同じ」が正解です。

それ以上に、耐震等級1、2、3のどのレベルで構造計画するかの方がよっぽど重要です。

しかし、なぜこれほどまでに木造が弱いと思われているのでしょうか?それには理由があります。

一つは、地震などで、木造の住宅の多くが倒壊しているのをTVなどでみて、そのように感じるのでしょう。
しかし、あれらの多くは「シロアリ被害に遭っている」ものや「違法に建てられている」ものです。

「違法に建てられている」と言うと、びっくりされるかもしれませんが、木造住宅の構造においては、特例(四号特例)があり、多くの設計者や施工者がその内容の事実をきちんと把握できておらず、違法になっているものもあるのです。

幼保園設計において、「構造計算をしっかりとしてもらう」「耐震等級を出来る限り2か3をとる」という要望さえきっちり出せば、鉄骨や鉄筋コンクリート同等の安心できる建物になるでしょう。
 
ここで重要なのは、「きっちりと構造計算をして設計をする設計者や施工者に依頼すること」です。



シロアリ被害は、ホウ酸処理で防ぐことができる

木造で一番気をつけたいのが「シロアリ」被害です。
ただ、近年はシロアリ被害を防ぐたてのいろいろな方法が出て来ています。

その中で、一番おすすめなのがホウ酸処理によるシロアリ対策です。

他のシロアリ対策は、5年ほどで効果がなくなったり、5年ごとに対策をしないといけないなどの問題がありましたが、ホウ酸処理であれば、水に濡らさない限り、その効果が薄れることはありません。雨時など施工方法に注意は必要ですが、シロアリ対策の強い味方です。

シロアリ対策がきっちりとできれば、構造的にも他構造と全く遜色ない木造の耐震性は、他より劣ることはないのです。





光熱費や健康に直結する「省エネ化」を図るにも木造が断然有利な理由です

省エネ化を図ることで、写真のような大きな空間でも、一箇所に壁掛けエアコン(10畳用程度)で十分冷暖房が可能になります。(写真提供:すずらん保育園 呉市)



外気温が0度ぐらいの屋外にコンクリート、鉄、木を並べておいておくと、コンクリートと鉄は、すぐに0度に近づいていくのに対して、木はすぐに冷たくなりません。また無垢の木は5度ぐらいまでしか下がらないという特徴もあります。

これからも分かるように、木造は高断熱化を図るために、一番ローコストで実現しやすい工法になります。

同規模の建物なのに、一方では月7万円の光熱費がかかるのに対して、高断熱化を図ると月3万円ぐらいに抑えることが出来るなど、高断熱化を図ることで可能になります。ちなみにこの場合、年間50万円近く光熱費を削減できるメリットがあります。

建築業界での省エネ化で断熱材や窓などが一番普及しているのが「木造」です。特に2014年以降、木造の窓では、アルミ枠ではなく「樹脂窓」が一気に普及して来たことで、コストもこなれて、利用しやすくなっています。

樹脂窓と聞くと火事になって溶けてしまいそうな印象がありますが、融点(溶ける温度)はアルミよりも高いです。

他の先進国では、アルミよりも樹脂窓の方が多く普及しているくらいです。

また、省エネ化を図る上で、もう一つ大切なのが「気密性」です。

衣服に例えるなら、断熱材が厚手のセーターで、気密は肌着みたいなのものです。
肌着を着ていないと、いくら厚手のセーターを着ても寒いのと同じです。

この気密と断熱で、省エネ化をはかり、光熱費をグンと落とすことができ、しかも夏涼しく、冬暖かい室内空間を実現することが可能になるのです。

高断熱・高気密化を図るには、木造の設計に慣れていて、かつ、高断熱・高気密化に精通している設計事務所が必須です。どれくらいの実績を持っているかをリサーチすることが重要でしょう。

国土交通省も木造建築を推進

国でも木造建築を推奨しています。

国土交通省が発刊している「木造建築のすすめ」は、一般建築のあらゆるジャンルで手がけられた木造建築を取り上げ、設計上注意しておきたいことなどを簡潔に示してくれている良書です。

ダウンロードをしたい方は、こちらをクリックしてください。


木造建築のデメリットは?

では、木造建築のデメリットは何でしょうか?構造とシロアリに関しては、上記にあげたように解決済みです。

デメリットは、大きく二つあります。2018年の現段階では、一般建築を在来木造を基本に設計できる経験を持っている設計士が少ないこと。もう一つは、住宅以外の大きな木造建築を施工した施工会社が少ないことです。

理由は、木造は住宅分野で広く普及していて、木造住宅に関わる設計士は、木造住宅の経験はあるけど、木造の一般建築の経験があまりないと言うことと、施工会社も同じく、木造を主にやっている会社は、住宅が中心で、例えば500m2を超える規模の木造建築の施工をほとんどやったことがないと言うことなどです。

もちろん探せば、500m2以上の一般木造の建築設計をしている設計士や施工会社もありますので、各地域で探してみてください。


木造建築のメリットは?

デメリットに対してメリットはどうでしょうか?下記に箇条書きであげてみましょう。
  • 他の構造に対してローコストで建設できる。鉄骨造に対して坪10万円、鉄筋コンクリート像に対して坪20万円安価
  • 多数の大工さんを投入することが出来るので、人材不足に陥ることがなく、工期を守って施工することが可能
  • 高断熱・高気密化を図ることが他構造に比べて、ローコストで簡易に出来る
  • 光熱費を抑えて、かつ夏涼しく、冬暖かい室内環境を実現できる
  • 地域材の木を利用でき、地域貢献につなげることができる(場合によっては補助もでる)
  • 高気密高断熱化により、設置しなければいけない空調容量が下がるので、建設時における従来の空調コストの約半分に納まる
  • 他の構造に対してローコストで建設できる。鉄骨造に対して坪10万円、鉄筋コンクリート像に対して坪20万円安価
特に、国の補助を受けて建設する幼保施設や福祉施設は、年度内竣工などで工事期日が厳しいことが多くあります。鉄筋コンクリートの型枠大工や鉄筋を配筋する職人が全国的にも不足しています。

またオリンピック景気で、上記の多くの職人が関東に出払っていて、工程を間に合わせるためには高単価で人を雇い、工事を行う必要が出るなど、社会的問題になっているほどです。
※特に鉄骨造の場合は、高力ボルトが不足していて、単年度工事にはほ間に合わない状況が頻発しています

その点、木造の主工事を行う大工は、遠方に行って仕事する職人も少なく、基本地元で仕事をしています。
工期に対して、多数の大工さんを集うことで安定的に工期に間に合わせることが可能になるのです。



まとめ

木造建築に対して、一般的に広がっている常識の多くが、実はそうでもなく、多くの施設に木造設計を取り入れることに大きなメリットがあることに気づいていただけたでしょう。

これから、施設を建て替えしたり、新築で建てたりする計画がある事業者様におかれましては、木造を一つの候補に入れることを一考することをお薦めします。



最後に、弊社について

株式会社 G proportion アーキテクツ 一級建築士事務所では、高断熱高気密化を図った木造住宅を2019年までの時点で108棟の設計・監理実績があります。

また2010年ごろからは、「この木造住宅の快適さを福祉施設に取り入れたい」と言うご要望から、サービス付き高齢者向け住宅やデイサービスの設計にも携わっています。

上記写真は、広島県福山市に手がけたサービスつき高齢者向け住宅「ありがとう」


2013年には、広島県安芸郡府中町のりゅうせん幼稚園にて、全国でもほぼ先駆けになる「木造耐火幼稚園」の設計を行いました。

また弊社の得意としている、「高断熱・高気密工法」を組み込み、2020年に施工される次世代省エネ基準のほぼ2倍の性能を持たせることを実現させました。

建物規模は、960m2 木造2階建です。

真冬でも朝登園すると部屋の気温が15度以下にならない性能を保持させることで、園児だけでなく、そこで働く保育士にも足腰が冷えず快適な環境を提供しています。

日本で先駆けて竣工した、木造耐火2階建+省エネ化を図った「りゅうせん幼稚園」の外観写真 (広島県安芸郡府中町)



2017年3月には、広島県呉市にて木造準耐火2階建 520m2のすずらん保育園が竣工。県産材の木を利用した補助を受けたプロジェクト。2017年12月には、呉市 美しい街づくり たてもの賞を受賞しました。

呉市 美しい街づくり たてもの賞を受賞した「すずらん保育園」



2018年3月には、広島県廿日市市に認定こども園 「廿日市こども園」が竣工。木造耐火3階建+省エネ化を兼ね備えたこれも日本に先駆けてのプロジェクト&施設です。施設規模940m2。

全国的に見ても、木造3階建てで、木造耐火構造のこども園はまだまだ少ないようです。そこに高断熱と高気密を組み合わせることで、全国的にも類を見ないこども園が誕生しつつあることろです。

その他にも、木造耐火2階建、980m2の兵庫県姫路市に2017年3月に竣工した「城見ヶ丘保育園」などもあります。弊社は設計事務所なので、基本的には全国区に対応が可能です。

2020年現在では、呉市に520m2の木造2階建耐火構造の認定こども園、広島県府中市に1,010m2の木造平屋建準耐火構造の保育所の工事が進行中。山口県美祢市にて、1,030m2の木造2階建耐火構造のこども園の実施設計中です。

ここで弊社代表の八納から、メッセーがございます。
木造での施設づくりに興味がある方は、ご相談に応じていますので、お気軽に下記からお問い合わせください。

会社概要

社名 株式会社 G proportion アーキテクツ
  カ)ジープロポーションアーキテクツ
設立 2007年2月
代表者 代表取締役 八納啓創
所在地
〒734-0002  広島市南区西旭町7-29-1 パトリアあさひ H号室
HP https://www.keizo-office.com/
設計対応エリア 全国にて対応しています。広島、呉、姫路、山口などに設計実績がございます
所在地
〒734-0002  広島市南区西旭町7-29-1 パトリアあさひ H号室